経費精算で紙の領収書や請求書をスキャナ保存するには、画像を取り込むだけでは足りません。入力期限、解像度・色、改ざん防止、検索、見読性などの要件を満たし、経費精算データと領収書を相互に確認できる状態にする必要があります。
なお、メールやWebサイトから受け取ったPDFなどは、紙をスキャンした書類ではありません。これらは原則として「電子取引データ」として保存するため、スキャナ保存とは別の要件が適用されます。
経費精算でスキャナ保存の対象になる書類
紙で受け取った領収書、レシート、請求書などをスキャンして電子データで保存する場合は、電帳法のスキャナ保存の対象になります。
- 店舗でもらった紙の領収書
- 取引先から郵送された紙の請求書
- 紙で受け取った納品書や契約書
- 経費精算で従業員が提出する紙の証憑
一方、次のような書類は、スキャナ保存ではなく電子取引データの保存を検討します。
- メールに添付されたPDFの領収書
- Webサイトからダウンロードした請求書
- 電子請求書システムから受け取ったデータ
- クレジットカード会社からオンラインで発行された利用明細
電子データをいったん印刷してスキャンすればよい、という扱いにはできません。受け取った元の電子データを、電子取引の要件に従って保存する必要があります。
スキャナ保存で満たす主な要件
経費精算の領収書をスキャナ保存する場合、主に次の要件を確認します。書類の種類や利用するシステムによって細部が異なるため、導入前に自社の保存方法と照らし合わせてください。
| 確認項目 | 求められる内容 |
|---|---|
| 入力期限 | 定められた期限内にスキャンし、タイムスタンプなど必要な処理を行う |
| 解像度 | 原則として200dpi以上で読み取る |
| 色 | 重要書類はカラーでの保存が必要。一般書類は要件に応じてグレースケールが認められる場合がある |
| 見読性 | 保存した画像を、画面や出力装置で明瞭に確認できる |
| 改ざん防止 | タイムスタンプ、または訂正・削除の履歴が残る仕組みなどを利用する |
| 検索 | 取引年月日、取引金額、取引先で検索できるようにする |
| 相互関連性 | 領収書と経費精算、仕訳などの関連を確認できるようにする |
| 保存・表示 | 必要な期間、データを保存し、税務調査などで速やかに表示・出力できるようにする |
1. 期限内にスキャンして入力する
紙の領収書を受け取った後、いつまでもスキャンせずに保管してよいわけではありません。入力期限は、一般に「速やかに行う方式」と「業務処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行う方式」に分かれます。
業務処理に係る通常の期間を経過した後に入力する場合でも、通常は最長2か月以内に入力し、その後おおむね7営業日以内に処理する形が基準になります。社内規程で、領収書の提出日、承認日、スキャン日を明確にしてください。
実際の期限は、入力に使うシステムの機能や、タイムスタンプの有無、訂正・削除履歴を残せるかどうかによって確認が必要です。単に「受け取ってから7日以内」と決めれば、必ず要件を満たすとは限りません。
2. 解像度・色・階調を保つ
領収書や請求書をスキャンするときは、文字や金額を判読できる品質で保存します。一般的な基準では、解像度は200dpi以上が必要です。
重要書類に該当する領収書や請求書は、カラーでの読み取りが必要になります。赤字や印影などの色も取引内容の確認に関係するため、白黒画像だけで保存しないようにします。
一般書類に該当する書類は、一定の条件でグレースケールによる保存が認められる場合があります。ただし、すべての経費関係書類を白黒で保存できるわけではないため、書類の区分を社内で決めておくことが重要です。
3. タイムスタンプまたは訂正・削除を管理する仕組みを使う
保存後に領収書の画像や関連情報を勝手に変更できないよう、改ざん防止の仕組みが必要です。
代表的な方法は、次のとおりです。
- 入力したデータにタイムスタンプを付与する
- 訂正や削除を行った場合に、その履歴と内容を確認できるシステムを使う
- 訂正や削除ができない仕組みを備えたシステムを使う
経費精算システムに「アップロードできる」だけでは、改ざん防止の要件を満たすとは限りません。タイムスタンプの付与機能、訂正・削除履歴、操作権限、ログの保存期間を確認してください。
4. 領収書を検索できるようにする
保存した領収書は、必要なデータをすぐに探せる状態にします。基本的には、次の項目で検索できるようにします。
- 取引年月日
- 取引金額
- 取引先
たとえば、「2026年4月1日から2026年4月30日まで」「金額が1万円以上」「取引先が特定の会社」といった条件で検索できることが必要です。複数の項目を組み合わせて検索できるかも確認します。
画像ファイルをフォルダーに保存するだけでは、必要な検索機能を満たせないことがあります。ファイル名に日付や金額を付ける方法を採用する場合も、実際に求められる条件で検索できるかを検証してください。
5. 経費精算データとの関連を確認できるようにする
領収書の画像だけでなく、その領収書がどの経費精算や仕訳に対応するものかを確認できる状態にします。
具体的には、次のような情報を紐づけます。
- 経費精算申請番号
- 申請者名
- 申請日
- 取引日
- 取引金額
- 勘定科目や部門
- 対応する仕訳番号
経費精算システムと会計システムが別の場合は、申請番号や仕訳番号を共通項目にすると、領収書から経費精算、仕訳まで追跡しやすくなります。
6. 保存した画像を明瞭に表示できるようにする
保存した領収書は、画面で拡大して内容を確認でき、必要に応じて速やかに出力できるようにします。金額、日付、取引先、但し書きなどが読めない画像は、保存しただけでは要件を満たせません。
スキャン後は、次の項目が読めるかを確認します。
- 領収書や請求書の発行日
- 取引金額
- 取引先名
- 品名や但し書き
- 税率や消費税額の表示
- 登録番号など、記載されている場合の適格請求書の情報
経費精算で実施する具体的な手順
実務では、紙の領収書を受け取ってから、保存状態を確認して紙の扱いを決めます。次の順番で運用すると、抜け漏れを減らせます。
- 領収書を受け取る
従業員は、領収書の原本を保管し、取引日、金額、取引先、用途を経費精算申請に入力します。 - 領収書をスキャンする
200dpi以上など、自社で定めた条件で読み取ります。重要書類に該当する場合は、カラーで取り込みます。 - 画像を確認する
金額、日付、取引先、但し書きが読めるか、画像が欠けていないかを確認します。 - 検索項目を登録する
取引年月日、取引金額、取引先を登録し、経費精算申請番号などを紐づけます。 - タイムスタンプなどの処理を行う
利用するシステムの方法に従い、タイムスタンプを付与するか、訂正・削除履歴を残します。 - 承認する
申請者以外の担当者が、領収書と経費精算の内容を確認します。 - 検索と表示をテストする
日付、金額、取引先で検索し、該当する領収書を明瞭に表示できるか確認します。 - 紙の原本を廃棄する
要件を満たした保存が完了し、社内規程で定めた確認を終えた後に廃棄します。確認前に廃棄しないでください。
紙の領収書を廃棄できるタイミング
スキャナ保存の要件を満たして保存できた場合は、紙の領収書を保存し続ける必要がなくなることがあります。ただし、スキャンした直後に廃棄してよいとは限りません。
画像の確認、入力項目の確認、期限内の処理、タイムスタンプまたは訂正・削除管理、承認などが完了していることを確認してから廃棄します。社内規程では、誰がどの項目を確認し、いつ廃棄できるかを明記してください。
画像が不鮮明だった場合や、登録した金額に誤りがあった場合は、紙の原本を廃棄せず、再スキャンや訂正の処理を行います。
経費精算システムを選ぶときの確認項目
システムを導入する場合は、広告に「電子帳簿保存法対応」と書かれているだけで判断せず、自社の運用で必要な機能があるかを確認します。
- 200dpi以上で取り込めるか
- カラー画像を保存できるか
- タイムスタンプに対応しているか
- 訂正・削除の履歴を確認できるか
- 保存後のデータを自由に上書きできないか
- 取引年月日、取引金額、取引先で検索できるか
- 日付や金額の範囲検索ができるか
- 領収書と経費精算申請を紐づけられるか
- 画像を明瞭に表示・出力できるか
- 保存期間中にデータを消失しない仕組みか
- 退職者や権限のない利用者が変更できないか
特に確認したいのは、タイムスタンプの付与方法と、訂正・削除履歴の保存方法です。機能の名称ではなく、領収書を登録してから修正・削除したときに、誰がいつ何を変更したかを確認できるかまでテストします。
スキャナ保存と電子取引を混同しない
経費精算では、紙の領収書と電子データの領収書が混在しやすいため、受け取った形式ごとに保存方法を分けます。
| 受け取ったもの | 主な保存方法 |
|---|---|
| 紙の領収書をスキャンした画像 | スキャナ保存の要件を満たして保存 |
| メール添付のPDF | 電子取引データとして保存 |
| Webサイトから取得した請求書 | 電子取引データとして保存 |
| 紙の領収書とメールのPDFの両方 | それぞれ受け取った元の形式に応じて保存 |
電子取引データを印刷して紙だけを残す運用は、電子取引データの保存要件への対応にならない場合があります。経費精算の申請画面に画像を添付する場合も、紙をスキャンした画像なのか、もともと電子で受け取ったデータなのかを区別してください。
導入前に社内で決めること
システムだけでなく、誰がいつ何を確認するかを社内規程に定めることが必要です。最低限、次の項目を決めておきます。
- 対象にする領収書・請求書の範囲
- スキャンを担当する人
- 画像の内容を確認する人
- 入力期限と申請期限
- 訂正や再スキャンの方法
- 紙の原本を廃棄できる条件
- 経費精算データと会計データの紐づけ方法
- 保存期間とバックアップ方法
- 退職者や異動者のデータを確認する方法
従業員本人がスキャンする場合は、本人以外の確認者を置くか、システム上で承認履歴を残すなど、社内の統制方法も検討します。
経費精算で電帳法のスキャナ保存要件を満たすには、紙の領収書を適切な品質で期限内に取り込み、改ざん防止、検索、表示、経費精算との関連付けまで行うことがポイントです。まずは自社で使うシステムについて、タイムスタンプまたは訂正・削除履歴、3項目検索、画像の表示・出力が実際にできるかをテストしてください。







